四百年の恋
 「センセー。この著者と大学の同級生なんだって?」


 「ああ……」


 清水は何をどこまで知っているのか。


 想像が付かず、圭介の胸の鼓動が早まった。


 「それだけじゃなくて、先生が通ってた大学が舞台だったんだって? 前世がお姫様だったという女子大生が恋人を捨てて、前世の許婚の元へと姿を消したんだって話の」


 (来た……!)


 何も知らない清水は無邪気に、圭介の過去の傷に触れる。


 動悸が激しくなる。


 「この世でそんなミステリアスなことが、あり得るのかな? 実は単なる駆け落ちだったりして」


 清水はくすくすと笑っている。


 周囲の女子生徒が、複雑な表情を浮かべながら清水を見ている。


 彼女たちは「伝説」として知られている、月光姫の話を耳にしている。


 圭介が当事者であることを認識しているので、これ以上清水が圭介を追い詰めるような発言をしないか、ハラハラしている。


 逆に聖ハリストス出身の男子生徒たちは何も知らず、興味深そうに圭介と清水を交互に眺めている。
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