四百年の恋
 (寒い……)


 圭介は急に悪寒に襲われた。


 「先生、どうしたんですか?」


 真冬に裸で屋外に放り出されたように、圭介は震え出した。


 「いや、大丈夫だ」


 圭介は必死で声を出した。


 「でも先生……」


 生徒たちは依然として不安そうな顔をしている。


 「今日はここで授業は中止だ。自習にしてくれ。保健室に行ってくる」


 圭介は廊下に出て、保健室へと歩き出した。


 「吉野くん。いや吉野先生。どうしたの?」


 背後から呼び止められた。


 初芝静香(はつしば しずか)。


 圭介の大学の同期。


 卒業後、聖ハリストスで社会科教師をしていたのだが、このたびの合併に伴い同僚としてここ紅陽学園で勤務することになった。


 「寒気がひどくなって、ちょっと保健室へ」


 「過労?」


 「……」


 「3年1組。あのクラスはあなたには、刺激的過ぎるわよね……」


 真姫と福山。


 その二人の生まれ変わりと推定される二人が、偶然圭介のクラスに揃ったのを、静香も知っていた。
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