四百年の恋
 (この地域には民主主義ではなく、ファシズムが存在している)


 ここはまさに「丸山王国」。


 市長や知事に陳情するよりも、丸山先生にお願いしたほうが、問題は解決する。


 それが常識。


 丸山乱雪が権力を掌握した途端、この近辺のインフラ整備は加速度的に充実した。


 延長された高速道路。


 増便された飛行場。


 そして丸山は……自らが生きている間にこの地まで新幹線をも延長させようと躍起になっている。


 今の状態が続けば、それもあながち夢物語ではないだろう。


 ここは丸山王国であり、帝王の権限は絶対なのだから。


 「……」


 圭介はインターネットで、丸山乱雪の公式ホームページを閲覧していた。


 熱く演説をしている画像が、トップを飾っている。


 すでに60を越えているが、エネルギッシュで若々しい。


 改めて丸山乱雪の顔をじっくり観察。


 (幹事長は清水にはさほど似ていないようだが……母親似なのかな?)


 「夕映霞」のサイトには、オーナーである清水の母親の画像が掲載されていた。


 ぼんやりとした横顔であったが、それでも清水に似た雰囲気の綺麗な女性であることは見て取れた。


 愁いを帯びた横顔。
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