四百年の恋
 「美月姫はいつも聞き役ばっかりだけど、いつか美月姫の恋バナも聞いてみたいな」


 「私!? 無理無理。好きな人いないし」


 「清水くんは?」


 清水の名前を耳にすると、美月姫は一瞬どきっとする。


 「だから清水くんは、ただ隣の席で……」


 平静を装った。


 「隣の席なのをきっかけに、仲良くなればいいじゃない」


 「別に今のままで構わないし」


 「清水くん、色んな女子から騒がれても、特定の彼女作ろうとしてないし。チャンスじゃない?」


 友人が勧めて来る。


 「ただの同級生としか思えないよ。それに清水くんは……」


 美月姫はそこまで言いかけて、言葉を飲み込んだ。


 清水優雅は、与党幹事長・丸山乱雪の隠し子。


 とはいえ莫大な養育費を支払われているようで、裕福な暮らしをしている。


 加えていずれは、丸山幹事長の跡を継ぐのでは……? との噂も。


 「第一住む世界が、違うし」


 美月姫はそう締めくくった。


 そう思っていたし、思わざるを得ない現状だった。
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