四百年の恋

慕情

***


 夏至が過ぎると、北海道は初夏の装い。


 昼の長さは短くなっているはずなのに、気温は上昇して夏が近づく。


 そして七月。


 期末テストを終えると、生徒たちは学校祭の準備を始める。


 最初は放課後に集まって準備。


 学校祭本番は、夏休み直前。


 直前になると午後の授業を中止して、学校祭準備一色になる。


 三年生は受験勉強で忙しいにもかかわらず、息抜きに学校祭に集中する。


 「……手伝わなくていいのか?」


 授業がないので圭介は、社会化準備室にて生徒の夏休み前の成績チェックなどの雑務に取り掛かろうと考えていたのに。


 清水優雅がこの日も準備室に入り浸り、作業の邪魔をする。


 「俺、自分の担当分もう終わらせたから。今、自由時間」


 (勉強ができるだけではなく、こいつは要領もいい)


 圭介は改めて感じる。


 自分の担当作業をてきぱき終わらせて、空いた時間にこうやって準備室に遊びに来る。


 かつてはいたずらどころか嫌がらせじみた対応で、教師泣かせだったはずなのに。


 なぜか圭介のことを気に入ったようで、付きまとってくるのだ。


 「センセーは俺の父親のことを知っても特別扱いしないから、いい感じなんだよね」


 (お前の背後には常に、丸山乱雪の顔がちらついて見えるんだけど!)


 そう言い返したいところだが、圭介は言葉を飲み込んだ。
< 379 / 618 >

この作品をシェア

pagetop