四百年の恋
 「どの学部を受験するのか、そこまで決めていただきませんと」


 「将来この子が丸山の後継者として指名される際のことを考えれば、どこの学部が一番相応しいのでしょうか?」


 「そういう観点で、大学を選択なさるのですか」


 結局のところ、東大法学部が一番相応しいと考えているようだった。


 圭介は合間を見て、清水の様子をこっそり窺った。


 母親には畏怖の念を抱いているのか、今日の彼は軽口を叩いたりはせず、借りてきた猫のようにおとなしくしていた。


 (気苦労が多い面談だった)


 三者面談を終え、圭介は安堵で大きく息をした。


 緊張した。


 清水の母親との初対面。


 モンスターペアレントみたいに過保護で、学校や教師本人にクレームを付けてくる親も困るが、あまりに無関心なのもまた困る。


 清水の母親がそれだった。


 子供を自尊心や虚栄心を満たすためのアクセサリー程度にしか考えていないのだろうか。


 圭介はついそんな風に思ってしまった。


 丸山乱雪の後継者として相応しい「後継ぎ」を作り出すために、息子をこの学校に入学させた。


 最上級の教育を受けさせるために、豊富な資金を与えてバックアップ。


 しかし清水の面倒を見るのはほとんどが水上で、母親である彼女は自分の店にかまけっきり。


 彼女がつけていたきつい香水が、残り香としてこの教室に漂っていた。


 何となく清水を不憫に感じた圭介だった。
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