四百年の恋
 「だから違うっていってるだろ。俺たちはただの同期の」


 「じゃあこのまま、真姫が福山くんとくっついても問題はないわね」


 「……あいつの勝手だろ」


 「そう。なら話しても大丈夫ね」


 「何をだよ」


 「……あの二人、この間の夜。函館山で夜景見ながらいちゃついて、そのまま帰りに……って噂よ」


 「え……」


 ……静香は、「真姫と福山が函館山に行った」という事実しか知らない。


 後の部分は脚色だった。


 かなり脚色された話を、圭介に教えた。


 ……なぜなら静香は、圭介に好意を持っていた。


 入学した頃からずっと。


 しかし圭介が真姫のことしか見ていないのを、静香は気づいていた。


 プライドの高い彼女には、勝ち目のない挑戦はできなかった。


 ただ見つめ続け、機会を窺っていたところ。


 ここに来て事態は急展開。


 新たに登場した福山が、圭介の立場を脅かしつつあった。


 このまま真姫が、福山とくっついてしまえばいい。


 静香はそう願った。


 それを既成事実化して、圭介が真姫をあきらめてくれれば。


 嫌いになってくれれば。


 真姫さえいなければ……。


 そんな願望が生み出した、小さな嘘。


 彼女が企んだ小さな嘘という浅知恵が、今後大きなトラブルを引き起こす要因となる……。
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