四百年の恋
***


 「最近花里さん、綺麗になったんじゃない?」


 クラスの女子が噂していた。


 歴史科の学生が集っている研究室。


 その窓からは隣の学部との連絡通路が見降ろせる。


 連絡通路はアーケードのようになっていて、そこからそのまま大学の中庭に出ることも可能。


 その辺りを真姫は福山と歩いていた。


 深まる秋。


 中庭の木々は、色付き始めている。


 「恋だの愛だの、全く興味なさそうな雰囲気だったのに」


 福山に向けて、可憐な笑顔を見せている真姫の横顔を、研究室の窓から見ていた圭介の背後から。


 クラスの女子の代表的存在の静香が、突然話しかけた。


 「ちょっといい男に言い寄られた途端、ああだもんね」


 「……」


 「真姫は吉野くんといずれくっつくんじゃないかって、もっぱらの噂だったけど。新たな登場人物に、こうも簡単になびいてしまうものなのね」


 「……関係ないだろ」


 圭介は淡々と答えた。


 「もしかして、強がってない?」


 静香は探りを入れるような目で、圭介を見つめた。


 「何で俺が強がるんだよ」


 「あなたたちの仲、みんな噂してたのに」
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