四百年の恋
 ……意を決して、圭介は直接優雅に聞いてみた。


 相手は天才レベルの頭脳の持ち主。


 勘付かれたら厄介なので、かなり遠まわしに質問してみた。


 同じ大学を受験する者同士、もっとコミュニケーションを密にしては……などと理由付けして。


 「微妙なんだよね。同じ大学を受けるとなると。所詮はライヴァル、敵じゃない?」


 そう斬り捨てた。


 「清水は法学部。大村は文学部だ。学部が違うと、成績の優劣も関係ない」


 「こっちのペースが乱れるんだよね」


 冷たく言い放った。


 その表情に一切の迷いも見られなかった。


 (本当にそう思っているのだろうか?)


 圭介は疑念を残しつつも、怪しまれたら困るので、それ以上の追求を避けた。


 優雅は無言でジグソーパズルを続けている。


 圭介は黙って優雅の仕草を眺めていた。


 自分だったら到底不可能なパズルを、サクサクと完成に近づけていくその指。


 すでに社会化準備室の壁にはいくつか、彼が完成させたパズルが糊付けされ、パネルにはめられて飾られている。


 冬休みに入ると、間もなく新年を迎える。


 するとすぐにセンター試験。


 わずかな登校期間の後、再び受験期間に突入し、私大入試、国立二次試験。


 そして卒業。


 顔を合わせる機会は、今後そんなに多くない。


 それまでの間に、あといったいいくつのパズルが完成されるのだろうか。


 圭介は壁の空きスペースの計算をしながら、ふと考えたのだった。


 目線を窓の外に移す。


 ようやく雪が止んで、西の空には夕日が輝いていた。


 そろそろ根雪になる季節だった。
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