四百年の恋
 「二次試験で満点を取るくらいに頑張れば、不可能ではないが……」


 試験後の登校日に、自己採点の結果を踏まえて最終面談。


 二次試験の出願をどうするか、担任教師と相談する。


 圭介は美月姫のよもやの「惨敗」に衝撃を受けた。


 秋口にスランプに見舞われたものの、その後復調の兆しが見えており、本番は大丈夫だと思っていたのだが……。


 「やはり鬼門はリスニングでした」


 美月姫は文系各科目が得意で、英語も筆記試験は学内トップレベルだったのだが。


 リスニングを比較的苦手としていた。


 これまでの模擬試験では何とかすり抜けて来ていたのだけど、よりにもよって本番でボロが出てしまった感じだ。


 「大村は、どう考えているんだ?」


 「……」


 美月姫は黙って俯いてしまった。


 よもやの大失敗。


 安全圏どころか、合格可能性20%という、かなり可能性の低い領域に足を踏み入れてしまった。


 (今まで頑張ってきたのに……)


 美月姫は自分の成績に見合った、できる限り偏差値の高い大学を望んでいた。


 それが東大だっただけ。


 大学名を決めてから学部を選んだ。


 そして東大に行けば、四月からも優雅と同じキャンパスの門をくぐれる。


 ……そんなうわついた気持ちが災いしたのかもしれない。
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