四百年の恋
 美月姫は後悔した。


 真剣な気持ちで受験勉強に打ち込んできた人とは、努力の気持ちが根本的に違っていたのだと。


 「まだ数日間猶予がある。ご両親とももう一度相談してみなさい」


 「はい……」


 「万が一浪人とかなれば、予備校の学費のみならず、精神的負担も家族に重くのしかかる。それでももう一年頑張っていくか、現役で合格できるところを模索するか。その点もじっくり相談するんだ」


 「分かりました……」


 美月姫は俯いたまま職員室を後にした。


 「……」


 美月姫の苦しむ姿を見るのは、真姫の悲しむ顔を見ているようで圭介もつらい。


 ただ……、


 (ついに……福山と真姫の間に、決定的な隔てができるのか)


 大方の予想通り、満点に近い成績を残し、国内の大学ならどこでも合格確実な優雅。


 過去最悪の点数で、学年内三位グループの連中よりも下回ってしまった美月姫。


 同じ東大の門をくぐるのは、かなり望み薄な事態となっている。
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