四百年の恋
 だが……。


 「申し訳ありません。本日は休暇を取っておりまして……」


 清水の母は、店に出ていなかった。


 次に、保護者の緊急連絡先として登録してある、彼女の携帯電話にも発信。


 電源は切られているようだった。


 これで、優雅と連絡を取る手段は完全に絶たれた。


 圭介は優雅の家に行こうとも考えた。


 しかし自分が一次会で帰宅となると、せっかくの二次会の予定を台無しにしてしまいかねないので、断念。


 「何かあったのなら、清水の母親の店にも連絡が入っているはずだ。それがないってことは、家庭内で急用があったというのが濃厚じゃないかな」


 明日改めて連絡を試みることにして、この夜は卒業生との最後のコミュニケーションに専念することにした。


 ところが。


 「すみません。私、帰ります」


 美月姫が急に、帰ると言い出した。


 二次会にも出席予定の○印を付けていたにもかかわらず。


 「美月姫、どうしたの?」


 ドタキャンに友人たちも慌てて、問いつめる。


 「ごめん。私、今はそれどころじゃ……」


 「どういうこと?」


 「ほんとごめん!」


 「美月姫!?」


 友人たちを振り切って、美月姫はタクシーに飛び乗った。


 流れ出した涙を見られたくなかったので、急いだのだった。
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