四百年の恋
 「帰っちゃった……」


 突然の美月姫の帰宅に周囲は慌てたけれど、結局予定通り残ったメンバーで二次会に向かうこととなった。


 「美月姫、泣いていたよ」


 美月姫の努力にもかかわらず、友人に涙を見られていた。


 「泣いてた? どうして?」


 「清水くんの話をした途端、顔色が変わったよ」


 「清水くんの? 美月姫とどんな関わりが」


 そこまで言って、友人たちは顔を見合わせた。


 「まさか……」


 好きだったのでは?


 最後のこの夜に、想いを打ち明けようと賭けていたのかも?


 友人たちは察したのだった。


 今になって振り返ると、当初は男子には距離を置いていた美月姫が、優雅には戸惑いつつも次第に心を開くようになって。


 いつも楽しそうに語り合っていた。


 「そうだったのか……」


 友人たちは悟ってしまった。


 今日も密かに優雅の姿を求めていて、落ち着かない雰囲気だったのは明白。
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