四百年の恋
 「……ありがとうございました」


 家の前まで送ってもらい、助手席から降りた美月姫は、圭介に礼を述べた。


 「また連れて行ってくださいね」


 「ああ、暇な時に連絡くれ。そうだ」


 車の物入れの中から、圭介は携帯電話を取り出した。


 「あれ、先生? 携帯電話を二台持っているんですか?」


 よく見る地味な色の携帯とは違う、見慣れない鮮やかなメタリックブルーの携帯だった。


 「いつものは学園から支給されている、業務用のやつなんだ。こっちがプライベート用」


 「使い分けているんですか」


 「業務用の電話で、昔馴染みと飲みに行く約束とかはできないからな」


 「公私混同になっちゃいますね」


 「大村はもう卒業生だから、連絡取るのは仕事とは別だから、プライベート用で」


 連絡先を交換。


 「無事登録しました」


 美月姫の携帯に、圭介のプライベート用携帯電話のデータが入り込んだ。


 「じゃ今度から、こっちのメアドにメールしますね」


 「よろしく頼む」


 「また次回、楽しみにしています」


 美月姫は車のテールランプが曲がり角で見えなくなるまで、ずっと見送り続けた。
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