四百年の恋
 「……」


 姿が見えなくなってから、深呼吸をして夜空を見上げた。


 天頂には夏の大三角。


 美月姫の住む辺りでは見えないのだけど、きっと天の川もあの辺りに横たわっているのだろう。


 一人になると、急に寂しさが増した。


 家に入れば、両親が美月姫の帰りを待っている。


 両親と一緒にいれば心強いけど、この寂しさを埋めることはできない。


 「ダメだよね、こんなの……」


 美月姫は自分自身に問いかけた。


 (優雅くんに置き去りにされた悲しみと絶望の中に、二度と光は射さないと思っていたのに……)


 先生と話していると、不思議と気持ちが安らぐ。


 担任だった頃の信頼感とは別の感情を、圭介に対して美月姫は抱え始めていた。


 「先生は私を、卒業生の一人としか見てくれていないよね、きっと」


 担任と教え子だった関係が、美月姫には鎖のように感じられた。


 最初は帰省中、話し相手がいなくて寂しくて、誰か話を聞いてくれる人がいればいいと願った。


 すると担任だった圭介と再会。


 気がついたら毎日のように会うようになっていた。

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