四百年の恋
 「……さっき守られて、嬉しかったです」


 歩きながら美月姫が告げた。


 「え?」


 「ラッキーピエロの前で、ナンパ男に絡まれた時」


 「ああ。喧嘩には自信があったけど、万が一相手が格闘家だったりナイフ持ってたりしたら勝てないから、内心ちょっと焦っていた」


 「そうは見えませんでした」


 「それに……、万が一警察沙汰にでもなったら、業務に支障が出るし。にらんだだけであいつら逃げていったから、助かったよ」


 「ふふ……。いずれにしても男の人に守られるって、気分がいい」


 美月姫は頬を腕に寄せた。


 「もう勘弁してくれよ。毎回あんな風に上手くいくとは限らないからな。相手が逆襲でもしてきたら」


 「そうならないように、気をつけます」


 「全くだ」


 圭介は苦笑いをした。


 (俺の連れ、と先生に言われた)


 それだけでも美月姫は嬉しかった。


 本心は、「俺の彼女」と言われたかったけど。


 ……ふと時刻を確認すると、五稜郭タワーの閉館時間まであと30分しかない。


 30分で巡るのは慌しいので、タワーに昇るのはまた今度にして、この日は五稜郭を一周するだけにした。


 腕をずっと組んだままで。
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