四百年の恋
 「何をばかな」


 圭介は一笑に伏せようとしたが、


 「吉野くん、昔言ってたことと今やってることが違いすぎる」


 「どういうことだよ」


 「今のままじゃ、あなたは同じ過ちを繰り返すわ」


 「過ち?」


 「あの子は真姫によく似ている。あなたがあの子をそばに置いておきたがるのは、それだけの理由でしょ?」


 「初芝、」


 「あなたは、大村美月姫とは絶対に幸せになれない。あの子もまた……」


 答えに窮している圭介に対し、静香はそう宣告した。


 「……なぜそう言い切れる?」


 「決まっているでしょ。あなたは彼女を、真姫の身代わりとしてしか愛せない。そして愛する者がその手をすり抜けて行ってしまうのが、あなたの宿命……」


 静香がよく分からないことを言い出したので問いただしたかったのだが、折り悪く他の教師たちがぞろぞろ職員室に入ってきた。


 「この話はまたいずれ。みんなに聞かれるとお前まで変に思われるぞ」


 「吉野くん!」


 話はそこで途絶えた。


 その日はずっと圭介も静香も忙しくて、話の続きをする暇はなかった。
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