四百年の恋
 とはいえ相手は元教え子、一夜限りの遊び相手では済まされない相手。


 ゆっくり段階を踏まなければならない。


 圭介も美月姫には十分に惹かれてしまっているので、もはやただの遊び相手にはできない。


 ゴールまであと一歩。


 焦ってさいころの目が「振り出しに戻る」を引き当てないよう、ゲームの最終段階のごとく、細心の注意を払っていた。


 「あっ、こら! 大村」


 これからの作戦を練るなどして、考えごとをしていたら。


 美月姫は圭介の飲んでいたビールのジョッキを、テーブルの上から持ち上げた。


 そして残ったビールに、口をつけようとした。


 「だめだ。未成年の飲酒は、法律で禁止されている」


 ジョッキをすぐさま奪い返した。


 「だって……。大学のコンパとかでは、同級生の子もみんな飲んでいますよ」


 「俺の居ないところでのことだったら、知らなかったことにしておく。だが目の前ではそうはいかない。誰かに見られ通報でもされたら、こっちもそれなりの社会的制裁を食らうことになる」


 「私もう、卒業したのに。先生に直接迷惑は」


 「教師が未成年の飲酒を黙認または助長したとあっては、責任を問われる。飲酒運転で捕まった場合、助手席にいた人や飲ませた店にも罰則が適応されるのと、理論は似たようなもの」
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