四百年の恋
 先生の気持ちを確かめたくて、提案してみた「旅行」。


 先生は拒否しなかった。


 さっき計画を立てて、あとは予約入れるだけの段階。


 旅行。


 これまでの二人の曖昧な関係をはっきりさせたくて、提案してみたのだった。


 一泊で出かけるともなれば、何もなしでは済まないだろう。


 「……」


 緊張するけど、待ち遠しい。


 (どうせ、初めてじゃないんだし)


 先生は知らないだろうけど、すでに男を知っている体。


 相手はここに戻るつもりのない男。


 もう失くすものはない。


 ただ……初めての時は突然の展開に無我夢中で、ゆっくり味わう余裕もなかった。


 だから二度目の時は、深く愛されたいとずっと願っていた。


 男と愛し合うことの充実感を、体の隅々に刻み付けてほしい、と。
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