四百年の恋

運命

***


 「ルーキーで、最速10勝!」


 同じ夜。


 美月姫を家まで送り届けてから、圭介は帰宅した。


 テレビをつけるとスポーツニュースの時間で、地元プロ野球チームにこの春入団したピッチャー、「タオル王子」が完封勝利を挙げていたシーンが流れていた。


 今年の新人賞は間違いなしと言われている。


 それを祝うかのように、しばらく棚にしまいこんでいた赤ワインを手に、ソファーに腰かける。


 グラスに赤ワインを注ぎ、一気に飲み干す。


 家ではあまり飲まないので、一人で飲むのは久しぶり。


 テレビのタオル王子の報道に目をやりながら、心では違うことを考えていた。


 もう後戻りはできない、美月姫との関係。


 今のままではいられない、美月姫への想い。


 いつまでも守っていきたい。


 大切にしたい。


 交際を経て、いずれは結婚……。


 (少なくとも彼女が大学を卒業するまでは、待たなくては)


 真姫を失ってから、18年間暗闇の中で待ち続けていた。


 その時間が今、全て報われるような気がしていた。

 
 周囲のどんな妨げも、蹴散らしてしまえると信じていた。
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