四百年の恋
 「花里さん、昨夜はあなたに鍵を預けたわよね?」


 昨日、真姫に鍵を渡して帰宅した先輩が、真姫の顔を見るなり駆け寄ってきた。


 「あの後、いったい何があったの? どうして研究室がこんなことに? 施錠しなかったの? 吉野くんのケガとは関連性があるの? 預けた鍵はどうしたの?」


 矢継ぎ早に質問攻めに遭った。


 周囲の関係者も、真姫のほうに寄ってくる。


 「私……」


 真姫は混乱した。


 まさか本当のことは話せない。


 ただ、鍵を預かっておきながら、管理責任を怠ったのも事実。


 昨夜は鍵のことなど忘れて、鍵はそのまま鞄の中……。


 「昨日、研究室に最後までいたのは、僕なんです」


 「!」


 急に福山が現れ、語り始めた。


 周囲もびっくりして、福山のほうを見つめる。


 「……昨日所要で遅くに研究室を訪れたら、花里さんがいました。すると吉野くんもたまたま訪れて。課題のことについて議論を交わしているうちに、ちょっと白熱してしまい、」


 「福山くん?」


 現実とは異なる話を福山は始めたので、真姫は驚いて福山を見た。


 すると「何も言うな」という目線で、真姫を制した。
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