四百年の恋
「はっきり覚えているのは、四階で割れたガラスの欠片を手に、福山に襲い掛かった辺りまでなんだ。次の瞬間俺はもう階段から転落していて、一階で福山に抱きとめられていた」
「私は全然、その辺りは覚えていない……」
「現場に居合わせた警備会社の人の話では、福山がそこにいなければ、俺は手すりに頭をぶつけて死んでいたらしいからな」
「……」
想像するだけでも、真姫は痛々しく感じた。
「すぐに立ち上がることができたから、骨折はしなかったと安堵したのも束の間。膝に全く力が入らなかった。だけど転落の際、いつ膝を負傷したのかも全然覚えていないんだ」
「まさかこんなことになるなんて……。本当にごめんなさい……」
再び真姫は詫びた。
「だからお前のせいじゃないって。気にするな」
「そういうわけには、」
「それよりお前、これからどうする気だ」
「どう、って?」
「あいつが好きなんだろ?」
「え……」
「あいつと付き合うのか?」
「今はとてもそんな気分にはなれない……」
想いが冷めたわけではない。
ただ……悪意をもってのことではないにせよ、人一人が不幸になったのを横目に、自分たちだけが幸せになるなんて真姫にはできなかったのだ。
「私は全然、その辺りは覚えていない……」
「現場に居合わせた警備会社の人の話では、福山がそこにいなければ、俺は手すりに頭をぶつけて死んでいたらしいからな」
「……」
想像するだけでも、真姫は痛々しく感じた。
「すぐに立ち上がることができたから、骨折はしなかったと安堵したのも束の間。膝に全く力が入らなかった。だけど転落の際、いつ膝を負傷したのかも全然覚えていないんだ」
「まさかこんなことになるなんて……。本当にごめんなさい……」
再び真姫は詫びた。
「だからお前のせいじゃないって。気にするな」
「そういうわけには、」
「それよりお前、これからどうする気だ」
「どう、って?」
「あいつが好きなんだろ?」
「え……」
「あいつと付き合うのか?」
「今はとてもそんな気分にはなれない……」
想いが冷めたわけではない。
ただ……悪意をもってのことではないにせよ、人一人が不幸になったのを横目に、自分たちだけが幸せになるなんて真姫にはできなかったのだ。