四百年の恋
 「俺のことは気にしなくていい。と言いたいところだけど、今回の件に関しては、早まらないほうがいいかもしれない」


 「えっ?」


 「近々、全てははっきりさせるから。それまではたとえあいつに誘われたとしても、軽はずみに受け入れないほうがいいと思う」


 「……私しばらくは、そんな気持ちになれないだろうから。でもどうして? はっきりさせるって、いったい何を?」


 「……約束だ」


 「うん……」


 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響き、程なく真姫も校舎へ戻った。


 授業のない圭介は、そこに残る。


 しばらくそこに立ち尽くしていると、辺りに誰もいなくなった。


 「くそっ!」


 圭介は拳で、金網をガン、ガンと殴りつけた。


 「全道チャンピオンも、インカレも、実業団も……。もう取り返しがつかない……!」


 真姫の前では、感情を隠していたが。


 一人きりになると、抑え切れなかった。
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