勝手に百人一首
(…………でも)






エレティナは窓辺の籐椅子から立ち上がり、繊細なレースのカーテンがついた天蓋のベッドの縁に腰を下ろした。




最高級の絹で統一された寝具に、ふわりと身体を埋める。






(このままでは、私は………)






涙はとめどなく流れて、こめかみを伝い、シーツをしとどに濡らした。





ひんやりと冷たい感覚に、エレティナは目を閉じる。






(ーーーなにを考えているのかしら、私は………。

王女として生まれた私にできる唯一のことは、神にお仕えして、一生涯、国の安泰を祈りつづけることだけ。


私は巫女になるのよ)






今まで何度も、自分に言い聞かせてきた言葉だった。





しかし、これまでは当たり前のように受け入れていたことなのに、今は痛くて苦しくて仕方がなかった。






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