勝手に百人一首
「…………くそっ」






レイモンドは両手で頭を抱え、苛立たしげに舌打ちをした。



今まで一度も、そんな粗雑な振る舞いなどしたことがなかったが、今日ばかりは身内から勝手に出てきた。







「………もう、どうにもならないのか……?」






誰にともなく呟いて、レイモンドは天井を仰いだ。




王室の壁画も担当した高名な画家に描かせた華やかな天井画の中の神が、冷ややかに彼を見下ろしていた。




レイモンドは思わず、その瞳を見据えて、静かに口を開いた。







「―――神よ。


あなたが、あの可憐で美しい姫を、我がものになさるのか」







俺は一体、なにを言っているのだ、と自嘲的に笑いながらも、レイモンドは続けた。







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