How much?!
会議室を退席して行く業者の1人が、親しげにうちの社員に声を掛けた。
「おっ、小町!」
「あれっ、浩二?!もしかして、選定会に?」
「そうそう!うちの商品を選んで貰えた」
「へぇ~そうなんだぁ。良かったねぇ」
俺の目と鼻の先で、ムカつくほど馴れ馴れしく“小町”と呼び捨てにする男・仙田製菓の営業マン笹本。
仕事ぶりは至って真面目だし、業者の中では若い世代というのもあって結構腰が低く、世渡り上手な方だと思う。
「あっそうだ!昨日のプレゼント、ありがとうね」
「その表情だと、気に入って貰えたってとこか?」
「えっ?そんなに顔に出てる~?」
「フフッ、相変わらず解り易いなお前」
「もう~っ!からかわないでよ~!」
彼女の頭を馴れ馴れしくポンと叩き、楽しそうに微笑む2人。
他の業者もいるというのに、2人から目が離せない。
………胸の奥が重く締め付けられるように痛む。
とても俺が入れる隙が無い。
だって、俺に対してあんなにもあどけた表情をした事なんて1度も無い。
それに、笹本の事を『浩二』と呼んでいる。
俺は『麻生さん』としか呼んで貰えて無いのに……。
昨日のプレゼント?
もしかして、誕生日プレゼントをあげたのか?
しかも、俺が見ても嬉しそうな表情を浮かべている彼女に更に胸が痛んだ。
何だよ。
誰からでも貰うのかよ。
ってか、いちゃつくなら俺のいない所でしろよっ!!
マジでムカつくっ!