How much?!
「俺が信用できなければ、タクシーを呼ぶけど」
「あっ、いえ………その…………えっと………ん~………」
どう返答していいのか困り、言い淀んでいると……。
「分ったから」
「へ?」
「無理させるつもりは無い」
「えっ……」
困惑している私の頭をポンポンと軽く叩き、彼はタクシー会社へと電話を掛けようとし始めた。
私はすかさずその手を止めて……。
「タクシーは呼ばなくていいです!」
「は?」
「…………泊まって行きますから」
「…………無理に「無理じゃありませんっ!」
彼の言葉に被せるように言い切った。
だって、そもそも私………泊まる予定でここへ来たんだから。
でもそんな事、彼には言えない。
まさか、お泊りセット持参してるなんて……口が裂けても言えないじゃない。
自分で言っておきながら、その先をどうしていいのか分からず、視線が泳ぎ始めると。
「小町」
「………はい」
「お湯が沸いた」
「あっ!」
彼からパッと手を離して、やかんのもとへと。
もう、本当に心臓が幾つあっても足りないよ。
背中に彼の視線を感じながら珈琲を淹れ、必死に胸の高鳴りを静めようと試みる。
………そんな事、無理だって解ってるのに。
カップを2つ手にしてリビングへと戻ると、
「フフッ……」
「どうかしましたか?」
「あっ、いや……何でもない」
「ん……?」
彼は手にしていた財布をテーブルの上に置き、紙のような物を差し出した。