How much?!


彼の長い腕が私の身体を抱きすくめるように覆い被さった。

しかも、意外と彼との距離が近い事に驚いて、固まってしまった。

仄かにアルコールの香りが漂って来る中、私の鼓動は一層激しさを増す。


「あっ、……麻生さん?」

「………ん?」

「寝辛くないんですか?」

「…………」

「お仕事なんですから、ご自分の寝易い格好の方が良いですよ?」


何だか、無理に私に合わせているような格好に申し訳なくて、私は空気と化す事にした。

すると、


「んじゃあ、お言葉に甘えて」

「んッ?!////」


私の首下に腕を差し入れ、布団の上に置かれていた腕が素早く布団の中に潜り込んで来た。

そして、いとも簡単に私の身体を抱き締めて……。


「ん、この方が寝れそうだな」

「◎△$♪×¥●&%#?!」

「おやすみ、小町」

「おおおおっ、おやすみっ、なさい!////」


彼の息遣いが耳元につくだけで脳内が蒸発しそうなのに、何、これ……?

拷問だよね??

色気が半端ない美声と、アルコールのせいで少し高くなった体温。

それと、好きな人に抱き締められながらベッドに横たわるなんて……。


30年生きて来て、今という時が一番緊張している気がする。

いや、そうに違いない!!

物凄い速さで心臓が早鐘を打つ。

だけど、何故か……彼の鼓動も早い気がして、ほんの少し顔を上げると、


「寝ろ」

「ッ////」


やっぱり、そうだ。

彼も緊張してるみたい。

ほんの少しだけ、照れた顔を見てしまった。


彼の心を垣間見た気がして、ほんの少し安堵した。

そして、お互いの鼓動を聞きながら……春めいた夜に呑まれて行った。


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