How much?!


肌寒さを感じて瞼を開けると、見慣れぬ景色に一瞬息を呑む。

そう言えば、昨夜は麻生さんのアパートに押しかけたんだった。


脳内で瞬時に答えを弾き出したと同時に、私は直ぐ横に視線を移した。

だが、当然そこには彼の姿が無い。


室内がすっかり明るくなっている所をみると、恐らく7時は過ぎている。

彼が居た筈の場所へ指先を滑らせてみるが、やはりそこは冷たかった。


枕元に置かれている時計に視線を移し、彼の痕跡を辿る。

――――3時30分。

彼がアラーム設定した時刻。

2人でベッドへ潜り込んだのは、確か0時少し前。

という事は、彼は3時間強しか寝て無い事になる。


やっぱり、連絡を入れてから来るべきだったのかも。


物凄い罪悪感が一気に押し寄せて来た。

だけど、過去に戻れる訳じゃないから、私にはどうする事も出来ない。

申し訳なさで視界が薄らと滲む中、私は重い足取りで寝室を後にした。


――――暖かい。

リビングの暖房がついている。


寝ぼけて消し忘れたのかと思ったのは、ほんの一瞬。

だって、リビングテーブルの上に置かれていたエアコンのリモコンには『予約設定午前6時』と表示されていた。


私が起きて来る時間を考慮して、部屋を温めておいてくれたらしい。

やっぱり、彼は優しい人なんだ。


目覚めの珈琲でも淹れようかとキッチンへ行くと、


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