How much?!


「えっ……?」


思わず、声が漏れ出していた。

だって、キッチン台の上にはラップが掛けられた朝食が置いてあったから。


ラップの上から軽く触れてみる。

既に冷たいそれは、時間の経過を物語っていて……。

彼が出掛ける前に用意してくれたモノだと容易に理解出来た。


真っ白なオーバル型のお皿に、半熟のハムエッグとミニトマトが乗せられている。

そして、その隣に食パンの袋が置かれていた。

……焼くのはセルフって事らしい。


そして、珈琲カップに小さな付箋が付いていた。



『今日は早く帰るから』


彼はこれをどんな気持ちで書いたのだろうか?

もしかしたら、特別な意味は無いのかもしれない。

だけど、私は…………。



彼が用意してくれた朝食をゆっくりと味わい、彼が自分の為にしてくれたように、私も彼の為に何かしたいと考え始めていた。

とは言え、何をしたらいいのかさえ思いつかない。


食後の珈琲を口にしながら、あれこれと思考を巡らす。


一先ず、仕事をして帰宅する訳だから、お腹は空いてるし、身体も疲れてるよね。

って事は、ご飯の用意とお風呂の用意かしら?


私は冷蔵庫の中を確認して、メモを取る。

脳内でサッと献立を思い浮かべ、必要な物を書き足して行く。


何だかこれって、新婚さんみたいじゃない?

自分で考えておきながら、恥かしくて顔が上気し出した。


私は手で頬を扇ぎながらリビングソファに腰を下ろした。


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