How much?!
『お呼び出し致します。総務課の木下さん、外線3番にお電話が……―――』
突如、室内に設置してあるスピーカーから社内放送が流れた。
しかも、結構な音量なのと復唱する為、暫くの間、室内の緊迫感が緩んだ瞬間だった。
俺はその一瞬を逃さず、椅子から腰を上げ忍び足で移動し、パーテーションと壁の隙間から彼女を盗み見た。
そこには長い髪を一つに束ね、色白で細身の女性がいた。
幸いにも廊下側を背にして、俺の方を向いて座っている。
しかも、長テーブルの端に座っていた為、普段はスカートに隠れている部分が大胆に……。
辛うじて、シルクのような薄い布地のスリップ状の下着を身に着けている為、脚は露わにはなっていなかったが。
それでも十分、魅力的な恰好と言える。
彼女は真剣な表情でスカートのファスナー部分を必死で直していた。
暫くすると、片付け始めた彼女。
どうやら、スカートが直し終わったようだ。
椅子から立ち上がり背伸びをすると、コンコンとドアを叩く音がした。
ちょうど迎えが来たようだ。
ドアの鍵を開け、後輩を招き入れた彼女。
すぐさま鍵を掛け、後輩にスカートを手渡した。
俺はそれ以上見る事も無いと思い、再びパーテーションの影に身を潜めた。
彼女の存在を初めて知った出来事がかなり強烈的で、あの日の彼女の姿を忘れた事は無い。