二人のプリンセス
序章
西暦×××年


ドリアス王国の首都、ルタイル。


小高い丘の上に厳かに佇む宮殿があった。宮殿はドリアス王国建国以来、ずっとこの国の動向を見守ってきた、非常に歴史ある宮殿だ。

それは春の訪れを少しずつ感じるようになったある日。

宮殿から元気な赤ん坊の産声が聞こえてきた。


「おお、なんということだ……」
それは、悲鳴にも近い叫びだった。

「アグレラ様、お気を確かに……」
一人の侍女がアグレラに近寄ろうとした。

アグレラ・リバル。
彼は、このドリアス王国の国王である。彼がこの国に生まれて三五年、彼は今これ以上ないほど怒りをあらわにしている。

アグレラは、必死になってなだめようとする侍女を突き飛ばし長い廊下を駆け出した。
妻エマのもとへ―――


「お待ちください。エマ様は只今お休みになっておられます。……元気なお子様を……二人。女の子を二人、お産みになられました」
侍女はムキになってアグレラの服の袖を掴み引き止めようとした。

「無礼者!!放さぬか!よりにもよって……何故二人なのだ。……どうしてエマは双子など……」
アグレラはそう叫びながら拳を握りつぶした。

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