華麗なる安部里奈

テッちゃんとアッちゃん

「テッちゃん、早く早くぅー」

「待てよー、里奈」

その日も、私は幼稚園で持て余したパワーを解き放つように、自分の家の中を走り回っていた。私の家の廊下は、20メートルほどあり、幼稚園くらいの子供が走るには十分な大きさで、下には赤い絨毯が敷かれているので転んでも大きな怪我をする事はない。



私はテレビで見たオリンピックの短距離選手を頭に思い浮かべ、まるで自分が金メダルを獲るかのような勢いで廊下をビュンビュンと走り回っていた。

テッちゃんは私のすぐ後を走って着いてきていたが、テッちゃんの弟・アッちゃんはそこからだいぶ離れた所をたどたどしい足取りで必死に着いてきているという感じだった。



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