華麗なる安部里奈
そんなハイテンションの私であったが、幼稚園の入園に関して一つ残念な事があった。聖蹟桃ヶ崎女学園付属幼稚園にテッちゃんの姿が無かったのだ。

テッちゃんというのは、うちで働く執事・八木 正十郎(やぎ せいじゅうろう)の長男である八木 哲也(やぎ てつや)君の事だ。私とテッちゃんは同じ年に生まれたため、兄弟のように仲良く過ごしていた。

幼稚園に上がる前は、屋敷の中や庭でテッちゃんと朝起きてから夜寝るまで、毎日ずっと一緒に過ごしていたほどだった。



それでもやはり、私は安部家の令嬢という立場であり、テッちゃんはその家で働く使用人の子供という事で、2人が同じ幼稚園に通うという選択肢はありえなかったのだろう。

しかも私が女学園付属の幼稚園に通う事になったために、私はテッちゃんと同じ幼稚園に通う事はできなかった。

そのため、私は幼稚園から帰ってきてから、屋敷の庭でテッちゃんと遊ぶというのが当時の日課になっていた。

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