年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
ソファではなく直接床のラグの上に座って、グラスを傾けながら平然と言う祥裄に、それはちょっと冷たいんじゃないかとソファの上から呆れた目を向けると、なんだよ、と不機嫌そうに口を尖らせる。

「約三ヶ月、ってとこ? えらくあっけない終わりだったわね」

「もったほうだろ、これでも。もともと勢いで始まったみたいなもんだし」

それであれだけ泣かされた私の立場はどうなるのか、と思いっきり睨みつけると、今度は気まずげに目を逸らして、小さな声で悪かったよ、と呟いた。


「お前が一番の被害者だよな。……ほんとごめん」


しおらしく謝る姿に、それ以上怒りは湧いてこなかった。

ふざけんな、ともっと罵倒してもいいんだろうけど、言葉がなにも出てこない。

きっと大輔くんがいるからだ、と思った。

あの日大輔くんが傘を差し出してくれていなかったら、祥裄のこの言葉を、こんなに冷静に聞くことはできなかっただろう。

絵里ちゃんに対しても、不思議なほど怒りは覚えなかった。嘘をついてまで奪い取りたかった人に、あっけなく別れを告げられて、かわいそうに、と同情してしまうほど。
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