年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~


「つまり、全部ウソだった、ってこと?」


部屋に入って暖房をつけて、勝手に冷蔵庫を覗き込んで祥裄が手早くおつまみを作る。こいつはこう見えて料理が上手くて、私よりよっぽど手際よく作るので、二人で家で飲む時にすぐに何か欲しい時は祥裄の担当だった。

その間私は部屋着に着替えて、グラスとお皿を用意していると、祥裄がちょうどよく、缶詰のオイルサーディンのガーリック炒めと、きのこを焼いて鰹節とポン酢をかけたものを持ってきた。どっちも私の大好物だ。

ワインを開けて、乾杯する。
祥裄が改めて、誕生日おめでとう、と言ってくれた。おめでとうなんて言葉、絶対聞けないと思っていた二人の人物から祝ってもらえて、なんだか贅沢な誕生日だ、と思う。ケーキは後で食べることにした。

ワインを飲みながら祥裄が話したことをまとめると、絵里ちゃんは別に不倫なんかしていなかった。不倫していたのは絵里ちゃんの友達で、相談していたことも全部真っ赤な嘘。その友達の話をそのまま自分に置き換えて話していただけらしい。


「俺と絵里が一緒にいる時に、その友達が偶然声かけてきてさ。その子もちょっと変わった子で、俺のいる前で堂々ともう不倫はやめたから、って話をしだして、どうも聞き覚えのある話だな、と思って後で問い詰めたら、絵里が白状した。俺と話すきっかけが欲しくて、最初から嘘ついてたんだと。
……まあ、最近うまくいってなかったのもあるしな。泣かれて面倒になって、別れようって言って置いてきた」
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