年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
それから横にまとめられていた髪を戻して、ゆっくりと指を通し始めた。

一本一本の手触りを確かめるように、何度も丁寧に往復させる。


「木下さんのために、あそこまで伸ばしてたんですよね?
やっぱりいきなりショートにしなくて正解だった。この長さでも物足りないでしょうけど、そこは我慢してもらってください」


髪を梳く手の感触はすっかり大輔くんに塗り替えられていて、祥裄がどう触れていたのか、すでにわからなくなっていた。

祥裄に髪を触られるのも好きだったはずなのに、優しいリズムで髪の間を通っていく、こんな安心感はきっと、大輔くんにしか感じない。気持ち良くて安らいで、ずっと触っていてほしいと思う。
なのに彼の手は、髪全体を梳かしきると、やがてゆっくりと離れていった。

大好きな手が離れていく心細さに、私のほうこそ子供みたいに、心の中で駄々を捏ねた。
嫌だ、離れないで、ずっと髪を撫でていて……。


「泣かせたりしない、って言ったのに、結局二回も泣かせちゃいましたね」


俯いた私の前に回り込んで、大輔くんがそっと涙を拭ってくれた。

私が顔を上げると、とびきり優しい笑顔で微笑みかけてくれる。
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