年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
ものすごい迫力だった。

至近距離で睨み合う、二人の間には触れたら凍りついてしまいそうな冷たい空気が漂っていて。
普段穏やかな顔しか知らないから、辻井さんでもこんな顔をするのかと、内心すごく驚いた。

この目で睨まれたら、私だったら絶対、泣く。

しばらく睨み合ったあと、スーツのほうが襟元の手をはねのけて、どこか冷たい笑みを浮かべる。


「片桐さん、が、見てるよ?」


はねのけられたほうがはっとして、私を見る。私はバカみたいに突っ立って、成り行きを堂々と見物してしまっていた。

「あ、すみません、私」
「いいのいいの。こっちこそ怖がらせちゃってごめんね?」

スーツのほうがそう私に笑って言って、じゃあね、とひらひら手を振って歩き出す。
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