年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
祥裄との内々の婚約が解消になったことは、会社のみんなには特に話してはいない。

元々きちんと伝えてあったわけでもなかったし、あの歓迎会の日、フライングで祝福してくれた面々は、なかなか正式な報告がないことを少し訝しく思い始めたところに、私がばっさりショートカットにしてきたことで、ああ破談になったのかと各々勝手に察してくれたようだった。

それでもやっぱりこの人たちにはちゃんと伝えなければならないだろうと、平山さんと竹田さん、明日香ちゃん、そして絵里ちゃんには、直接話した。
なんとなく予想していた通り、平山さんは残念そうなどこか安心したような複雑な表情で、竹田さんはやっぱりな、と訳知り顔で。明日香ちゃんには大輔くんと付き合うことも同時に話したので、よくやった、と珍しく興奮気味に、それぞれ納得してくれた。

それでも絵里ちゃんだけは、どんな反応が返ってくるか、どうしても予想できなかった。
破談の理由は私の心変わりだから、沙羽先輩ひどい、と怒り狂うか、それともまた自分にもチャンスが回ってきたと喜ぶか。

頃合いを見て資料室に呼び出して、今までの経緯を全部話した。なんの話だろうと初めはきょとんとした顔で聞いていた絵里ちゃんも、次第に神妙な面持ちになって、私が話し終わるまで唇を引き結んで、一言も発さなかった。
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