年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
ノーブルでは着付けの依頼は受け付けていない。着付け希望の人は本店に案内するし、常連さんがどうしてもセットはタケさんで、と言ってきたら、いつもは本店にタケさんが出向いて対応している。
だから今回もそうするんだろうな、と当たり前に思いながら聞いていたら、何を思ったか俺に任せる、と言いだした。

嘘だろ、と叫びそうになるのを必死でこらえた。

あっさりと鈴坂さんを説得して俺でいい、と返事をもらうと、タケさんはすぐに予約を入れてしまった。
鈴坂さんもなんで簡単に納得するんだ、と恨めしく思いつつ、その場で無理ですなんて言えるわけない。内心焦りまくりながら、任せてください、なんて口からでまかせを吐く。

よろしくねー、とにこにこ笑って帰っていく鈴坂さんを見送ってから、ドアを閉めた瞬間にタケさんに詰め寄った。

「なんで俺が担当なんですか!? 鈴坂さんですよ!?」

鈴坂さんはめちゃくちゃ注文が多い。

店が変わろうが値段が上がろうがタケさんをずっと指名しているのは、それだけこだわりが強いからだ。本店にいる時から、カットはもちろんロッドを巻くのやカラーの塗布でさえ、違う人間がやるのを嫌がった。
本店からついて来たお客さんは、大体がそういう人だ。
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