年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「ちょっと座りましょう、こっち……」

慌てて見渡すと、細い脇道に入って少し離れたところに、座れそうなベンチがあった。そこまで頑張って歩いてもらって座らせると、沙羽さんはイタタ、と右の下駄を脱いだ。

「すみません、ほんっとすみません」
「いいよ、そんなに謝らなくて。鼻緒擦れなんて想定内だし」

しゃがみこんでひたすら謝る俺に沙羽さんは苦笑して、籠のバッグの中から大きめの絆創膏を取り出した。
片手を塞いでいたりんご飴を俺に持たせると、身を屈めて赤く腫れたところに貼る。

「準備いいですね……」
「綾川さんが念の為に、って渡してくれたの。もらっといて良かった」

また下駄を履いて、親指を動かす。うん、平気、と俺に向かって笑いかける。
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