年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
柔らかな声で紡がれた、聞き覚えのある言葉に驚かされる。

「そう、言ってました?」

「? ええ」

「……私です」

顔をあげた辻井さんが、よくわからない、というように、不思議そうに私を見た。

「どうやら私が言ったみたいなんです、それ。初めて会った時に」

自分でさえ全く覚えていなかったその言葉が、彼の中にちゃんと残っていたことに、改めて驚いたし、嬉しかった。
今、頑張っている大輔くんの、支えの一つになってくれているのなら、こんなに誇らしいことはない。

辻井さんも驚いたように目を瞬かせて、それからふわりと笑った。


「あいつの強さは、あなたが与えたものだったんですね」


私は慌てて否定する。

「違います。ただのきっかけだっただけで」

大輔くんの強さは、大輔くんが頑張ってきた結果として身に付いたものだと思う。私の一言は、その一部分でしかない。
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