年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
スタイリストになって、アシスタントの時代よりは給料は上がった。でも今度は歩合の部分が多くなって、売上が下がれば下手したらアシスタントより低くなることもありうる。
今は優先して新規客を振ってもらってるからいいけれど、それに甘えているわけにもいかない。少なくとも指名のお客さんが固定してつかない限りは、安定したとは到底言えない。

「早く自信を持って、結婚しましょうって言いたいんですけどね」

沙羽さんはもう、結婚のことなんて一言も話題に上らせないけれど、したい気持ちが無くなった訳ではないと思う。一緒に出かけた時に、小さい子供を見て羨ましそうにしている時もあったし、結婚式場のCMに気を取られていることもあった。
それにきっと、沙羽さんの中の俺に対する不安だって取り除けていない。たまに電話で話しているのを聞く限りは、俺のことはご両親には話していないようだったし。

それでも、今の俺にできることは、ただ技術を磨くことしかない。焦ったって仕方がないと、最近になってそう思えるようになった。
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