年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
俺の言葉を聞いて、タケさんがいきなり言った。

「お前、あと一年で俺に追いつけ」
「はっ?」

思わず大きな声を出してしまって、慌てて沙羽さんの顔を見る。少し身じろぎしただけで、起こさずには済んだようだ。

またまた何を言い出すんだ。あと一年って、そんな無茶な。

「正確には一年半かな。場合によっちゃもっと早くなるかもしれないけど」

「……なにかあるんですか?」

えらく具体的な言い方に、すごく嫌な予感がする。

「俺が抜ける」

その嫌な予感を、あっさりと一言で言い切った。

「辞めるんですか? 独立? もしかしてクリアに戻るんですか?」

うろたえてしどろもどろに訊く俺に、タケさんが嫌に冷静に答えた。

「どっちも違うよ。クリア時代の先輩が独立するから、その立ち上げを手伝ってくれないかって誘われてるんだ。……ほら、この前来ただろ、浅井(あさい)さんって人」
「あの、ちょっと意地悪な人ですか?」
「そう、その人」

タケさんが少し笑って頷く。ついこの前店にいきなり訪ねてきたその人は、なんでも芹沢さんの片腕で美容師としてはすごい人らしいけど、俺にとってはただのイヤミな人にしか思えなかった。
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