年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「いいよ、沙羽で。もう慣れちゃったし、なんか片桐さんじゃ変な感じがする」


「……じゃあ、沙羽さん、で」

なんとなく彼の中で私の名前が漢字に変換されたのが伝わった。
より近い距離で呼んでもらっているようで、少しくすぐったい。

「じゃあ私も、大輔くん、でいい?」

そう尋ねると、はい、と嬉しそうに笑った。



「どういうふうにして欲しい、とか、希望はありますか?」

希望なんて聞かれると思わなかったから、少し驚いて彼を鏡越しに見返す。


「練習台なんでしょ? いいよ、好きに切って」

「そうなんですけど、本当にないんですか、こだわり。このくらいの長さがいい、とか」

「ばっさりショート、って言ってるのに、もったいないって反対してるの大輔くんじゃない」

「いやまあそうなんですけどね」


困ったように返してくる大輔くんと私の会話を聞いて、フロントから戻ってきた辻井さんがこちらを見て苦笑した。
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