年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「カットモデルと言っても、基本はモデルさんの要望にお応えするように切るんですけど。
どうやら大輔がわがままを言ってるみたいですね」

「わがままっていうか、だってもったいないと思いませんか、この髪?」

「確かに言いたいことはよくわかる」

そう辻井さんも同意して、私の方へ目を向ける。

「片桐さん。本当にこいつに任せても大丈夫ですか?」

「……すっごいガタガタとかは困りますけど」

「それは大丈夫です。最後に僕が手直ししますし。
……お聞きしてるのは技術的な問題ではなくて。
スタイル自体を美容師に任せる、というのはある程度信頼も必要かな、と思うんですけど、練習中のこいつの感覚を信頼できますか、ということです」

顔をひねって大輔くんを見上げると、少しだけ緊張しているような雰囲気だった。


信頼。大輔くんが、私に似合うと思う髪型を、見てみたい。


「ゆっくり変化、って言ってたけど、ちゃんと最後まで付き合ってくれるんだよね?」

「それはもちろん。継続してモデルをお願いできるなら、俺としても助かりますし」

「じゃあ信頼するよ。まずは第一段階、大輔くんの好きなように変化させて」

そう言って笑いかけると、大輔くんが纏う緊張が解けたのがわかった。

「よかったな、そう言ってもらえて。そんだけ責任重大だぞ」
 
辻井さんが大輔くんに発破をかけるように肩を小突く。
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