年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
あれから大輔くんとは、何回か一緒に食事をした。

そうは言っても行けるのは真夜中までやってる店に限られるから、ラーメン屋とかファミレスとか、そういうチープな店ばかりだった。
おごる、と言っているのに、二回目以降大輔くんは律儀に割り勘を貫くので、あんまり高いところには行きにくい、という理由もあった。

やりとりは大抵LINEで、最初に私からメッセージを送る時は送信を押すのにえらく緊張して、お前は小学生かと一人で突っ込んでみたりもしたけれど、大輔くんからすぐに返事が返ってきてほっとした。
でもそれは運が良かったみたいで、彼の既読がつくのはほとんどが八時を過ぎたあたりだ。

営業中は携帯なんて見る暇がなく、営業後も練習だけではなくミーティングやら勉強会やらいろいろとあるらしく、いつも忙しそう。

会うのはほとんど十時過ぎで、それでも練習を早目に切り上げてくれているらしい。



私はいつも、約束した時間より少し早く店を訪ねる。

そうすると、彼は大抵練習中で、ひょい、とドアから顔を出す私に気付いて嬉しそうに名前を呼ぶ、その時の沙羽さん、の響きが大好きだった。


辻井さんはいる時といない時があって、いる時は必ずあの必殺の綺麗な笑顔で挨拶してくれた。
もう一人いるはずのスタッフは、どうやら営業後はすぐに本店へ行って練習しているらしく、一度も会ったことはない。
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