恋する白虎

忘れた恋

杏樹はゆっくりと眼を開けた。

ん……?

ランプの中の炎が揺れる、ほのかにオレンジ色の暗闇の中で、杏樹は意識を取り戻した。

最初に目に飛び込んできたのは、天井の規則正しい網目模様だけだった。

ここって、何処だろう。

それを確かめるために、杏樹はゆっくりと起き上がった。

回りを確かめようとする前に、部屋のすみの椅子に腰掛け、腕を組んだ男が目に入る。

白銀の髪が、橙色の暗闇に浮き出るように光って見えた。

「杏樹!!」

「きゃあ!」

な、なにっ?!

男は焦ったように杏樹に走り寄ると、至近距離から杏樹の顔を見つめ、ハアーッと息を吐いて眼を閉じた。

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