恋する白虎
第六章

記憶の欠片

杏樹は決心した。

永舜の冷たい眼差しが、苦しかった。

これからもあの人は、あんな目で私を見るの?

そんなの、嫌だ。

話をしないと前に進めない。

杏樹は寝台から下りて永舜を探した。

屋敷は広く、使用人らしき人の姿しかなかった。

どこにいるんだろう。

杏樹は屋敷を出た。

屋敷を出るとすぐに空を見上げた。

雨だ。

日の光が眩しく辺りを照らす中、銀の糸のように空から止めどなく落ちる雨が、杏樹の足を止めた。

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