恋する白虎
永舜は、何度呼び掛けてもツンとしてこちらを見ようともしない杏樹に業を煮やした。

思わず正面に回り込み、杏樹の腰を乱暴に抱き寄せて瞳を覗き込む。

「きゃあっ」

杏樹は思わず声をあげ、そんな永舜を見上げた。

「そう怒るな。許せ……」

永舜は切なそうに杏樹を見つめた。

だ、だって永舜がいけないんじゃん、勝手にあんな……!

でも……。

ああ、もうっ!

杏樹は、永舜が可哀想になって口をひらいた。

「分かったっ!もういいよ、許す」

瞬間、永舜は涼しげな瞳を見開き、日が射したように表情を明るくした。
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